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500T / 250D の在庫は数ヶ月分。Reflx Lab がリスプール販売の現状を説明

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「今回のコダックの決定は、独立系フォトグラファーや中小企業がフィルム写真のエコシステムに貢献する革新性と創造性を脅かすものである。」コダック製映画用フィルムのリスプールで知られる Reflx Lab がこのような表現でコダックを批判するとともに、リスプールフィルムの今後の販売について説明するブログを公開しています。

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この記事によれば、同社が展開している「500T」「250D」をもとにしたフィルムの在庫は「残り数ヶ月分」しか確保できていないとのこと。幸いなことに、 Reflx Labの経営自体はコダックのこの動きだけでは心配ないようです。

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コダック社による映画用フィルムの販売制限については当サイトでも以下の記事で紹介しましたが、リスプール販売を行なっている大手事業者からこのようなまとまった形で情報が出てきたのは初めてです。

これまでリスプールによるフィルム販売を行なってきた事業者は、コダックから映画用の長尺フィルムを仕入れ、35mmフィルムに代表される写真用フィルムフォーマットに巻き直した上で販売してきました。しかし、ここ最近コダックは「映画撮影に使用する」という証明書類を販売前に要求し始めたとされており、この方針によってリスプール業者がフィルムを直接仕入れるハードルが上昇したとされています。

今回の記事の中で Reflx Lab は以下のようなコメントを残しています。

  • そもそも135フィルム(35mmフィルム)のルーツは、ウィリアム・ケネディ・ローリー・ディクソンが70mmの映画向けフィルムを巻き直し、写真用フィルムに転用したことにさかのぼる。今回のコダックの決定は、このようなイノベーションやクリエイティビティに反するものである
  • リスプールフィルムは、Ultramax や Portra といったコダックのフィルムと競合していると主張する人もいるが、リスプールフィルムが市場から姿を消したとしても、コダック製のフィルムが需要を吸収しきれるかは疑問である
  • 一部のリスプール事業者側にも今回のコダックの判断に対する要因がある。例えば、米国のウォルマートで販売された使い捨てカメラの中には、期限切れの ECN-2 フィルムが装填されているものがあった

Reflx Lab が販売する「500T」や CineStill「800T」など、リスプールフィルムは映画用のフィルム(ECN-2と呼ばれる現像処方が必要)からリムジェット層と呼ばれる保護層を除去し、通常のカラーネガフィルムと同様のC-41処方で現像できるようにしている場合が見られます。リムジェット層の除去を行なっていないフィルムの場合、「ECN-2」表記がフィルムに見られることがほとんどですが、中にはこのような表記がされておらず、現像ラボが誤ってECN-2をC-41用の現像機に投入してしまうケースがあります。

https://r2.film-photo.net/e26861af-57b1-46da-90dd-c2195fb5fa0e.pngCineStill 800T などは、事前にリムジェット層を取り除くことでC-41現像を可能にしている

リムジェット層を含むフィルムが誤ってC-41用の現像機に混入してしまうと、剥離したリムジェット層が機械内部に付着し、故障の原因となることがあります。多くの場合、この剥離部分は粉末状で現像液内に残留するため、現像液を全交換が必要になることも少なくありません(現像機の容量によりますが、数万円分の現像液が無駄になってしまうこともあります)。

Reflx Lab がブログで書いている「一部のリスプール事業者」の問題点はラボの観点からは以上のような問題がありますが、仮にコダックがECN-2のC-41問題を解決したいなら他に取れる手段があるはずです(C-41の長尺フィルム販売など)。利益追求を狙った経営判断が背景にあると思われますが、コダックはフィルム写真の文化を支えてきた一員でもあります。今回の動きは「コダック謹製のリスプールフィルム販売」の布石だとする見方もあるようですが、今回の意思決定がフィルム写真文化の発展に暗い影を落とすことにならないよう祈りたいところです。