Phoenix 200 はデジタルカメラでスキャンするのが最適なカラーフィルム
2023 年 12 月に Harman Technology から発売された Phoenix 200 は、久しぶりに登場した新しいカラーフィルムとして多くの注目を集めました。
神話に登場する不死鳥のように、この新しいカラーフィルムは希望、再生、変身を象徴しています。Harmanが世界最大級の写真フィルムメーカーとして新たなレガシーを築くべく、乳剤からカセットまで一貫して製造された史上初のカラーフィルムであることは大きなマイルストーンです。
パッケージに記載された上記のメッセージでは、他にもこのフィルムの売上を R&D に再投資する姿勢が示されており、新しいカラーフィルムの開発を継続していく決意が伝わってきます。一方で、 "It is experimental in its nature with some quirky characteristics" として、このフィルムが開発途上であることも Harman は認めています。
そんな Phoenix 200 ですが、発売から約一年経ってこのフィルムの特徴が明らかになってきました。特にスキャンの方法によって大きく結果が変わるようです。
10 月に公開された Film Photography Podcast のエピソードでは、Ilford/Harman 担当者へのインタビューが含まれており、「現像ラボのスキャナでもデジタイズできるが、最も良い結果が得られるのはデジタルカメラでスキャンした場合だ」との発言がありました。
スペインの現像ラボ Carmencita Film Lab が公開したレビュー「Harman Phoenix. The good, the bad and the ugly」では、世界中の現像ラボで広く使用されている富士フイルム製の Frontier シリーズやノーリツ鋼機製の HS シリーズを使ったスキャン結果が詳細に比較されています。特に、 Phoenix 200 は Frontier シリーズでスキャンするとコントラストが過度に強調され、シャドーのディテールが失われるという指摘がなされています。
さらに、フィルム写真の現像・スキャンに関する動画を多く公開している Kyle McDougall 氏の動画「Harman Phoenix 200 - A Very Different Colour Negative Film」では、このフィルムを GFX 50R + Negative Lab Pro でデジタイズした際の独特な色味やトーンについて詳しく解説されています。 動画の後半 Kyle 氏はこのフィルムを ISO 100 で撮影した時の変化について言及。粒子感は ISO 100 に設定した方が改善されるとした上で、色が赤方向にシフトする点を指摘しています。色のバランスはパッケージに記された通り ISO 200 が最善ですが、粒子感や、暗部の階調が必要になるシーンでは 0.5 - 1 段オーバーで露出した方が望ましい結果が得やすいようです。
まとめると、Phoenix 200 は Experimental = 実験的な要素を含んだまま市場に投入されており、使用環境やスキャン方法によって評価が分かれるフィルムと言えます。今年 9 月には 120 フォーマット版が発売されましたが、これに引き続く新たなバージョンが登場するのを楽しみにしたいところです。