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コダックがフィルム生産ラインを一時閉鎖する模様

フィルム

コダックが 11 月にフィルム生産ラインを一時的に完全停止する予定であることが明らかになりました。工場の近代化を進めるための措置であり、生産設備を刷新して需要増に対応する狙いがあるようです。

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コダックのフィルム生産体制

コダックは 2012 年の経営破綻後、一般消費者向けのフィルム事業を Kodak Alaris (コダック・アラリス) に売却しました。しかし、フィルム自体の製造は現在も Eastman Kodak Company (イーストマン・コダック社) が手掛けています。コダック・アラリスが販売を担い、イーストマン・コダックが製造を続けている形です。今回、イーストマン・コダック社の決算発表で表題のコメントがありました。

今回の CEO コメント

コダックのCEOであるジム・コンテネンザ氏は、最新の決算説明会で以下のように述べています。

"Our film sales have increased on motion picture and in still film and other films. So on film, we’re doing a shutdown in November, total shutdown. We’ve continued to invest in our manufacturing process. Well, we need to shut down completely to bring light into the dark, right? Film is made in the dark. So in November, we will be modernizing the plant, putting more investment within that, which has also caused us to use more cash in the quarter to build up inventories, while we do this. But if we continue to see our commitment and our customer commitment to film, still in motion picture, we are going to continue to invest in that space and continue with that growth."

(意訳)「私たちのフィルム販売は、モーションピクチャーとスチルフィルムの両方で増加しています。11月には完全な生産停止を予定しており、製造プロセスにさらなる投資を行います。フィルムは暗闇の中で作られるため、明かりを取り入れるためには完全な停止が必要です。これは設備の近代化とさらなる投資を意味し、その間の在庫確保のために資金を多く使用しました。しかし、フィルムに対する私たちとお客様のコミットメントが続く限り、この分野への投資と成長を続けていきます。」

この生産ライン停止に伴い、コダックは事前に在庫を積み増して対応するとのことですが、計画通りに工事が完了するかが注目されます。

1年前の決算報告では

また、1年前の2023年8月9日に行われた決算報告では、コンテネンザ氏が以下のように述べています。

"We recently renewed our supply agreement for film with our long-term customer, Kodak Alaris in a deal that will run through 2028. We are committed to manufacturing film as long as there is demand from the filmmakers and photographers worldwide."

"In addition, we continue to see growing demand in our still in motion picture film business. A great example of the ongoing relevance of film as an artistic medium is Christopher Nolan's Oppenheimer, which was shot on Kodak large-format film, including both color film and a 65-millimeter black and white film created by Kodak."

(意訳)「私たちはコダック・アラリスとのフィルム供給契約を更新し、2028年までの契約となりました。世界中の映画制作者や写真家から需要がある限り、フィルムの製造にコミットし続けます。さらに、スチルおよびモーションピクチャーフィルム事業での需要増加を引き続き目にしています。フィルムが媒体として持つ素晴らしい例は、クリストファー・ノーランの『オッペンハイマー』です。同作品はコダックの大判フィルムで撮影され、カラーフィルムだけでなく、コダックが特別に開発した65mmの白黒フィルムも使用されました」

この発言からも、コダックが引き続きフィルム製造に強い意欲を持っていることが伺えます。映画業界でのフィルム需要が高まっていることや、クリストファー・ノーランのような著名な映画監督がコダックのフィルムを採用していることは、同社にとっても大きな励みとなっているようです。他にはウェス・アンダーソンもコダックのフィルムを愛用していることが知られています。

今後のフィルム供給への影響は?

今回の一時的な生産停止により、市場でのフィルム供給に影響が出る可能性があります。しかし、コダックは事前に在庫を十分に確保していると述べており、大きな供給不足は避けられる見込みです。それでも、フィルム愛好家の間では一時的な品薄や価格の変動が懸念されています。

まとめ

コダックの今回の決定は、短期的にはフィルムの供給不足の可能性が懸念されるものの、長期的にはコダックのフィルム市場に対する強いコミットメントを示すものと言えそうです。設備の近代化と生産能力の向上により、今後も高品質なフィルムを安定的に供給できる体制が整うことに期待したいところです。