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コダック、映画用フィルムの流通を制限する動き。リスプールによる再販に影響か

フィルム

写真フィルムの需要が高まるなか、Kodak が映画用フィルムの販売を制限し始めたというニュースが注目を集めています。これまで同社は、映画撮影以外を目的とした業者や個人に対しても、映画向けに製造されたリールを販売をしてきました。今後、映画撮影を目的としない業者へは供給を制限する可能性があることが明らかになりつつあります。

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リスプールによる再販とは、流通している映画用フィルムを小分けし、35mm など静止画撮影用の形態に巻き直して再販売する手法を指します。こうしたフィルムには映画撮影向けの特性が備わっていますが、リムジェット層 (現像時に特別な処理を必要とする層) を取り除いたり、カートリッジに詰め替えたりすることで、一般的な写真用フィルムとして使用できるようにするのが大きな特徴です。

https://r2.film-photo.net/f839503a-f492-4eb5-ba35-28b9700d8184.png出典: cinestillfilm.com

このカテゴリでもっとも有名なブランドが CineStill です。同社は 2012 年からこの手法で事業を拡大してきました。たとえば、同社の代表的な製品 800T は、Kodak のシネマ用フィルム「Vision3 500T」を静止画用にリスプールし、リムジェット層をあらかじめ除去したうえで C-41 現像対応に仕立てたものとして知られています。海外のブログ記事などによれば、CineStill は Kodak との特別な取引関係を結んでいると目されており、今回の方針変更による影響を免れる可能性があるのではないか、という憶測が飛び交っている状況です。

https://r2.film-photo.net/ea8334d0-a9fc-4ffc-9059-0990b35a54eb.JPGCineStill BWXX は映画 Oppenheimer でも使われた Kodak Double-X (5222) フィルムがベース

一方、このリスプール市場には CineStill 以外にも複数のブランドが参入しています。たとえば Reflx Lab といったレーベルも映画用フィルムを巻き直して販売してきました。しかし、Kodak が「映画撮影に使用する」という証明書類 (監督やプロデューサー名、作品タイトル等) を販売前に要求するとされており、この方針の適用が始まればこれら小規模リスプール業者がフィルムを直接仕入れるハードルは大きく上昇するとみられています。実際、Reflx Lab ではこの影響で Kodak とは別の卸業者からの仕入れを余儀なくされている のだとか。

https://r2.film-photo.net/e26dc96d-f4af-4122-92da-c1494b45efb1.png2025 年 1 月現在、Reflex Lab ではリスプールフィルムの販売を継続している

短期的には、こうした動きによってフィルムの入手経路が狭まる懸念があります。一方で、Kodak は フィルムの生産能力を拡大 しており、また静止画フィルムの販売を担う Kodak Alaris では経営体制が刷新されるなど、組織面でも変化の時期を迎えているところです。こうした状況を踏まえて、今回の方針変更は Kodak 自身が公式にリスプール版のフィルムを販売する布石なのではないか、と推測する声も聞かれます。これまでバラ売りされてきた映画用フィルムが、将来的には正規商品として一般ユーザー向けにリリースされる可能性も否定できません。

現段階では不透明な部分が多いものの、フィルム市場における選択肢がどう変化していくのか、引き続き注視していく必要がありそうです。

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