Kodak TRI-X (400TX) が発売 70 周年を迎える
コダックが現在も販売している白黒フィルム TRI-X 400 (400TX) は 1954 年 11 月の発売。細かい改良を重ね、ロングセラーとなっている TRI-X 400 は、今月で発売 70 周年を迎えました。
TRI-X 400 が発売された当時の記録を Keppler's Vault 50: Kodak Tri-X - mike eckman dot com が紹介しています。TRI-X 発売当時、最も ISO 感度が高いフィルムはコダック Super-XX や Ilford HP-3 (HP-5 の前身) でした。Super-XX は Double X とも呼ばれていて、Super-XX よりさらに感度が高いフィルムとして、Triple-X、すなわち TRI-X という名前が付けられたようです。
TRI-X の登場により、それまで難しかった音楽ライブなどの暗所撮影や、高速シャッターが求められるスポーツシーンの写真撮影が可能になりました。また、1960 年代には Super 8 フォーマットのフィルムも発売され、動画撮影でも高感度の ISO が活用されるようになりました。
佐和九郎『佐和写真技術講座』によれば、日本では TRI-X は 1955 年に発売されました。同書は「在来のスーパー・XXに比べて、あらゆる性状が優つたものになつている」「感光乳剤の特筆に値する、いちじるしい進歩である」と評価しています。(同書は戦後期の日本における技術の歴史を知る上で非常に貴重な資料です。国立国会図書館のデジタルコレクションにも所蔵されているので、興味のある方は一読をお薦めします)
2021 年には、TRI-X を内蔵した使い捨てカメラがアメリカで発売されました。2024 年現在も、Ilford HP5 と並ぶ入手性の高い高感度白黒フィルムとして貴重な存在であり、今後も長くファンに愛され続けてほしいと思います。